日本食品免疫学会とは

 日本食品免疫学会は、免疫機能に及ぼす食品の作用を研究・調査するグループとして組織された食品免疫学研究会が前身となっています。研究会の目的は、①食品成分が感染を防御しアレルギーを予防する作用についてその科学的根拠を国内外の学術情報で検証すること、②日本において食品の免疫機能の評価方法を確立しその内容を社会に発信すること、でありました。

 食品の免疫調節機能に関する文献の精査を3年近く行ない、その結果を基に大学・公的機関・企業の研究者が熱心に議論を行ないました。直近の10年間に公表された学術論文の中から12,000件を選び、さらにその中から1,300件余りの食品の免疫機能を実証する論文の内容を厳密に評価しました。その結果、食品がヒトにおいて抗感染、抗アレルギー作用をもつことを確信するに至りました。

 これらの成果を免疫機能の評価に関する報告書としてまとめ、厚生労働省に提出しました。その後、この研究会の活動を全国レベルに広げるべきであるという会員の大きな声を受けて、食品の免疫調節機能を明確にし、それを裏付けるための免疫機能に関する学術活動を行なう学会として日本食品免疫学会が設立されました。

 本学会の設立には免疫学の著しい進展が深く関わっています。これまで、生体を調節するシステムの恒常性は自らのしくみによって完璧に制御されていると考えられてきました。しかしながら、免疫系は生体外からのシグナルを積極的かつ高度に識別することにより機能を制御していることが明確になり、われわれは常に生体外シグナルを認識し、これと向き合い、自分にとって最も都合のよい状態を生み出して生きていることが明らかとなってきました。生体外シグナルの代表的なものであり、かつ生命に大きな影響を与えるものが食品であります。そして、食品が免疫系に及ぼす影響を科学的に解明し、その成果を生命の健全な維持に役立てるのが日本食品免疫学会の使命であります。

 食品免疫学は、基礎的研究から応用までを含む幅広い学際的な学問分野であり、これからの世界をよりよいものにするために欠くことのできない研究領域であると考えています。本学会の使命は高く、その達成には不屈の努力を要求されると思います。幸い、本学会の主旨を理解し活動している研究者は若い人が中心となっています。若く将来性のある力に食品免疫学の発展を託し、大いにその活躍を期待しています。

平成26年4月1日
日本食品免疫学会
初代会長 上野川 修一